安全ルールを破って得するのは誰? 実体験に基づく回答を用意しました
安全ルールは正直言って、面倒ですね。
考える方も、実践する方も。
1つの作業をするために、安全道具を装備し、確認し、その場に行き、僅か数秒で事を終え、再び確認し、装備を外し、時間が来たらまた………。
そんな事の繰り返しが続きます。
もし、身のこなしに自信があって、安全ルールを無視したならば、1回の作業は1分足らず。
でも、安全ルールに則れば、その1分足らずが倍どころの話ではなくなる時間消費。
やっぱり面倒ですね。
だから、ちょっとズルしてルール無視。
ほら、なんてことはない。
そもそも責任者の監視だって数分間ではこちらを把握し切れないし、それ以前にみんな同じ事をしているワケだし。
ちょっとズルして大きな時間を稼いで、
……余った時間をサボって休む?
それとも、予定以上の作業をこなして評価を得る?
…と、まあ、安全ルール無視にも人それぞれの思惑が存在しますね。
安全ルールは各個人の安全を守る為のものであり、同時に企業全体の安全水準を保つ存在でもあります。
ところが世の中、安全ルールを無視する人物は多く、企業方針で安全無視なんて場合も正直、あります。
(きちんと説明すれば『安全無視』ではなく、『そんな事で問題化する筈がない』という、視野の狭い考え方をしてしまう、『人間』をまるで理解していない企業)
(↑ もしくは、代表者・責任者が人として問題のある人格)
安全確保には少なくない人の知恵と経験者の知識、そして割高とも思える予算が必要となるわけですが、それらを投じる安全意識にはきちんとした理論上の結果が期待されている筈です。
でも、現実問題、あらゆる方面で面倒と思われる安全への意識には『出来れば無視したい』という思いが強く働き、多くの人がちょいちょいと無視する場面を目にしてきました。
という事で、ここでは安全ルールを破った行動をする事で誰が得するの?
という話に触れていきます。
一般的に考え得る安全無視の考え方と、その結果、労働災害が発生した場合の代償を簡単に書きますね。
安全ルールを破って得するのは誰? 従業員編
このページのテーマはあくまで
『安全ルールを破って業務を続けた場合、その結果、一番得するのは誰?』
という内容です。
では、参りましょう。
どんな立場の人物がどういった安全ルールを破る事で、いったい誰が得するのでしょうかね?
読み続ければ自然と答えは判る筈です。
でも、ちゃんと最後に答えも書き出しますのでしっかりと読んでくださいね。
時間短縮及び怠慢によるルール破り
誰でも経験がありそうな話ですね。時間短縮行為です。
そして業務に慣れてしまったが故の怠慢。
例えば具体例としてこんな社則が存在します。
あなたが身を置く事業所を参考に類似した例を探してみてください。
- 『荷物が○○Kg以上の場合は人の手で持ち運んではいけない』
- 『荷物の運搬は2段重ね以上をしてはいけない』
- 『設備運転時は必ず○○を着用し、正しく使用する』
- 『設備点検時は必ず電源を落とし、惰性を殺してから点検を始める』
- 『特定空間に入る際には管理者に入室の申し出を行い、必ず許可を得てから入室する』
- 『敷地内ではいかなる場合でも走らない』
- 『交差点では必ず一旦停止後、危険が無いか左右を確認する』
- 『指差し確認を必ず行い、異常が無い事を確認してから操作に当たる』
- 『目視による異常確認、稼働中の違和感を覚えた際には作業を中断し、責任者に知らせ出る』
- 『些細な変化でも日報に書き記す』
試しに10通りほど書いてみました。
従業員という立場は
『可能な限り仕事の時間帯を縮め、その上で業務時間をなるべく楽したい』
という思考が常に付きまといます。
これは個人的にとても正直な考えだと思います。
でも、その正直な考えを貫くか、それとも社則に従うかでその先に明暗の分かれ道が潜むものです。
そして、この話の場合は間違っていると理解しつつも、正直に行動してしまった。
という話です。
では、それぞれの時間短縮及び怠慢の結果、災害に繋がってしまったとします。
それまでの時間短縮はどんなものか、そして災害が発生した場合、どういったリスクを負うかを考えてみましょう。
『荷物が○○Kg以上の場合は人の手で持ち運んではいけない』
工場や倉庫、小売店や事務所など、比較的目につくルールです。
この場合、持ち運ぶ行為がNGですので、その場で持ち上げる事は可能です。
つまり、規定以上の重量物は運搬車両なり台車なりに載せてから運びましょう。
という事ですね。
このルールを無視した場合のリスクはどうでしょう?
腰・腕・手首・つま先等を傷める
既定の重量にもよりますが、1度2度のルール違反であれば、さほど大きなリスクを背負う事は無いでしょう。
しかし、持ち運んだ方が手っ取り早いからと、それを続けるとどうでしょう?
体にかかる負荷は元気な内には気付きませんが、同じ作業でも繰り返すうちに小さな負荷が必ず蓄積されます。
この蓄積が一定を超えると、腰や手首を筆頭に常時違和感を覚え、それはやがて痛みに変わります。
そして度を越えれば常々痛みを感じる事になります。
聞き慣れた言葉を出せば、神経痛というものですね。
会社に与える損害は作業速度の低下。
他にはあなた自身の今後に、他人には理解される事のない継続した痛みが伴う事になるでしょう。
ただ、重量物を抱えた状態での転倒や、重量物を足元に落としたりした場合は話が異なります。
やはり手にした物の重量や形状で話は異なりますが、時には大きな労働災害・損失の可能性も秘めています。
会社にとってはあなた自身も財産です。
そんなあなたが身動き取れなくなってしまったら、あなた自身の存在が会社にとって損失となるケースもありますよ。
『荷物の運搬は2段重ね以上をしてはいけない』
フォークリフトによくある問題ですね。
パレットの多くは段重ねした状態での運搬を想定しておらず、積み重ねを可としても積み重ねた状態で運搬を不可とする会社が圧倒的多数を占めるでしょう。
しかし、勘違いした熟練者ほど段重ね状態で自信に満ちた運搬を行い、それを自ら高い操作技術として自慢します。
またはこう言います。
『時間短縮のため』
『作業効率のため』
会社のルールを破ってまで行う時間効率の先には何が控えているでしょうか?
積荷崩落・器物損壊・人身事故等を招く
フォークリフトで運搬する荷物は、その時点で人力ではどうにもならない重量を運ぶケースがほとんどですね。
人力でどうにもならないという事は、重量や物量はどうあれ、事故が発生した時点で『労働』が付かなくとも『災害』となって発生するわけです。
特にフォークリフトは狭い空間での小回りが利く乗り物ですが、それ故に急なハンドル操作で荷物のバランスが崩れる場合が多々あります。
1枚のパレットを運ぶだけでも崩落事故が珍しくないのに、2段以上となるとどんなバランスになるかを想像しましょう。
仮に、荷崩れを起こした隣に作業者が居たとすれば?
仮に、荷崩れした先が外壁だったとすれば?
仮に、荷物ごとフォークリフトが転倒したら?
一応、『仮に』とはしていますが、これって本当に多い事故なんですよね。
会社も、従業員も、荷物も、自分自身も、大きな損失をまともに受ける可能性が大です。
ちなみに、時間効率を叫んで段重ね運搬に勤しんでも、せいぜい稼げる時間は数秒から数分。
そして荷崩れをはじめとする事故が発生すれば、その解消に数十分から数日間。
自分や他人が障害を負ってしまえば解消不可の半永久。
コツコツとした時間短縮の積み重ねは重要ですが、少なくとも運搬時にそれを考えるにはリスクがあまりにも大き過ぎると感じますね。
『設備運転時は必ず○○を着用し、正しく使用する』
安全ルールは全ての担当者の命を守る為に存在しますが、そのルールを破るのはいつでも人間側です。
その代表はと言えば、面倒なルールの一部を無視するというもの。
この話の場合、着用しなければ誰かに言われる。
でも、ちゃんと着用するのは面倒なので、形だけそうしてごまかそう。
というものですね。
つまり、見た目はしっかりしていますが、正しく使用するという気はない。
そんな感じです。
結果、よく見かけるのが衣服から飛び出した工具や、命綱など。
一触即発、重大事故の可能性
この話の場合は『設備運転時』としています。
大小様々な設備が存在しますが、パワー・速度・継続率、どれを見ても人が太刀打ちできない能力を持ち、惜しみなく最初からフルパワーで稼働してくれます。
お題目である『設備運転時』とは、優しく言い換えれば
『スイッチ1つでいつでも稼働するよ』
という状態ですね。
そんな点検時に正しく着用していない装備は不必要に飛び出ている事が多く、稼働した瞬間に飛び出した部分が当たるという現象が往々にしてあるものです。
人は自分に何かが当たると驚いてその方向に振り返る性質を持ちますが、そこが事故発生の瞬間にもなり得るんですね。
具体的にはこうです。
- 稼働した作業機械が飛び出た何かに当たった。
- 驚いて何が当たったのかを確認する。
- 必然的に頭が下を向き、飛び出た頭が作業機械の稼働エリアに入り込む。
- 機械はとても正直なので、そのまま作業を続けて担当者の頭を潰す。
こんな感じですね。
命綱を着用して命綱にこの先の人生を奪われるとは、なんともな結果ですね。
『設備点検時は必ず電源を落とし、惰性を殺してから点検を始める』
惰性とは人の目で見る事が難しい、設備の中に残った最後の力のようなものです。
設備には必ず電源が必要ですね。
そして電源と設備は必ずケーブルで繋がっていますよね。
設備の稼働を終了した時、ケーブルに残った電力がこの場合の最後の力となるわけです。
イメージしにくい場合は水道に繋がれたホースを思い出しましょう。
必要な分だけ水を使い、水道を止める。
すると、ホース内に水が残りますね。
その残り水が惰性の源です。
ホース内に残った水の分だけ、機械は動く事が出来る。
という事です。
惰性の残った設備内で保守点検。
考えるだけで怖いですね。
重大労働災害一直線
多くの人は電気に関する知識が乏しく、
『電源オフ=完全停止』
と認識してしまいがちですが、実はそうではありません。
バッテリーなどを考えるとイメージし易いでしょう。
バッテリーは電力供給が無くとも、バッテリー内部に電力があるだけ機械は動いてくれます。
そして機械の全ては電気があるだけ稼働する性質を持ちますので、電力供給が絶たれても同線内部に残った電力があるならば、それすらも使い切るんですね。
ただ、ケーブル内部に残った電気量などたかが知れている量ですので、稼働した際の動作はとても不安定です。
例えばプレス機が惰性で稼働すれば、落ちる事は出来ても止める事が出来ない。
なんて事が考えられますね。
別に不思議な話ではありません。
プレス機はもともと物質を圧し潰す目的の設備ですので、『落ちる』分には僅かな電力で稼働できても、それを止めたり、引き上げたりする電力はその時点で残っていないのです。
圧し潰す目的の設備なのですから、それなりの重量もあるでしょう。
加えて重力がその動きに加勢します。
そんな中で点検作業などをしていれば?
数人一組で作業中、惰性を知らない外の作業者がボタン確認を行っていたとすれば?
『特定空間に入る際には管理者に入室の申し出を行い、必ず許可を得てから入室する』
厳重に管理された空間にはそれなりの理由が必ずあります。
特に火や溶剤を多用する工場で見掛けるのが『関係者すらも簡単に入り込めない特別空間』となります。
もちろん、保守点検などの理由で年に数回は立ち入る事になりますが、こういった場所は
『立ち入るだけで命に危害が及ぶ場所』
と知っておきましょう。
それでも、慣れるとやはりズルをしようとする輩がいるものですがね。
重大労働災害しか発生しない
特定空間はその時点で滅多に人が入り込まない空間となります。
高所で言えば足場がない。
あっても老朽化している。
(経年劣化を調べるために入り込む場合も)
低い場所で言えば地下室が主ですかね。
空気よりも重い気化した溶剤の溜まり場になっていたり、同じく一酸化炭素の溜まり場となっている場合もありますね。
業務に直接関係のない場所の点検が多いため、一般的な従業員であればその知識もないのが普通となる場所でもあります。
一方で、特別過ぎるがために特殊な知識を必要とし、特別な許可を必要とし、特別な装備を必要とし、入室の都度、特別な許可が求められるわけですね。
何故、いちいち入室の際に許可が必要になるかと言えば、理由は2つ。
許可者が外部から入室可能な状態かどうかを見極める。
(禁止区域内部の現在データを観測できる場合)
というものと、いざ進入禁止内部で作業者に労働災害が発生した際、入室した事実を知らなければ助け出す事が出来ない。
(危険区域侵入には作業者と監視者がセットになる)
単独で侵入し、労働災害が発生した場合、それはほとんど長い期間の意識障害や死を意味します。
また、数少ない知識者が倒れる事から、その救出は知識に乏しい人物が乗り出すケースもあります。
侵入に必要な機材すら頭に思い浮かびませんね。
この場合は『ミイラ取りがミイラになる』という結果も生み出します。
『敷地内ではいかなる場合でも走らない』
『わかっちゃいるけど…』
という代表例の1つですね。
いかなる場合でも走らない。
どんな状況下でも走らない。
小学生時代の『プールサイドは走らない』の教えではありませんが、成長した大人の職場でも適用される基本的ルールです。
走る目的は当然ながら何らかに対する時間短縮でしょうが、この『走る』という行為が様々な危険を生み出すのですね。
発生する労働災害の全てが『予想外』
『走る』という行為は、実は様々な予測不能な事故を招き、具体例は数え切れません。
そもそも『走る』という行為を行う事で、実際に走者の視野が狭まります。
狭まった視野は多くの物事を見落としやすくなり、ついでに思考能力も低下します。
走っている間、注意力が著しく低下すると表現すれば分かり易いでしょうか。
結果、つまらない所でつまづいてみたり、『なんでこそに?』という部分に体を強打したりします。
また、無事走り終えて目的を果たしても体が疲れているため、次の動作に鈍りが生じます。
普段から運動しない人物ならば、この『鈍り』がひどく表れ、回復するのに時間を要し、その間の作業そのものに危険が生じます。
例えるならば体調不良。
具合が悪い時も色々な面で能力が低下し、注意力が散漫になりますね。
走るという行為を行った後は、それに似た状態になるという事です。
で、ここまではあくまで走者単独の場合の話。
怖いのはここからで、『他者』を巻き込んだ場合です。
仮にあなたがどんな急な目的で走っていたとしても、周囲の人物の多くはその事を知りません。
そして場所は職場。
部門によっては運搬車両や自動搬送機などが行き交う場所でもあります。
ただし、安全最優先の社内では誰かが『走ってくる』という想定を持たない上、自分の業務で集中がそちらに向いてしまい、特に交通の面では歩行者への配慮が欠けがちです。
よくある事故が事業所内部の交差点による接触事故。
移動中の従業員・トラック・フォークリフト…。
相手がどんなものかは分かりませんが、接触時の衝撃もそれぞれですね。
特に、走る方だって走られる方だって自分が何かにぶつかるという予想は立てていません。
なので、お互いに無防備となります。
『痛い』で済まされるような衝突であればちょっと叱られて終了ですが、場合によっては二次災害・三次災害と被害が拡大し、複数の従業員を巻き込んでの大騒動になっても不思議ではないので、どんな時も走らないという意識は持った方が得策でしょう。
『交差点では必ず一旦停止後、危険が無いか左右を確認する』
交差点と聞くと、なんだか自動車運転に関する道路交通法の話に思えるかもしれませんが、導線と導線が重なる部分…、『出会いがしら』という表現が作り出せる通路や道路の全ては交差点と言えるでしょう。
分かり易く言えば、
『物陰から誰かが出てくるかも知れない』。
そんな平面上の通路や道路が重なり合う地点の事です。
勝手知ったる公道にしろ事業所内にしろ施設内にしろ、慣れてしまった交差点ほど一時停止・左右確認を忘れていませんか?
既に『面倒』さえ思う事がなくなってしまっている、日常いおける悪い習慣ですね。
ある種の『運命の分かれ道』
先の未来を予知できない人間にとって、日常的にお世話になる交差点の存在とは、その通過のしかた1つで先の明暗を分けてしまう存在です。
毎回同じタイミングで交差点を素通り直進し、無事向こう側に着くという事実は、連続して何回通用するものでしょうか?
誰もが事故に対する危機感は持ち合わせているので、偶然接近する物陰の移動を察知したならば、誰でもその方向や物体が気になって一時停止を行い、左右とはいかなくともその方向に目を向けるでしょう。
ただし、習慣とは怖いもので、時に偶然接近する何かに気付かない場合は、確認が出来なくなるという事を意味しますね。
正しくは気付いていないのだから確認しようがない。
これで事故が発生します。
ここでは自分が確認を怠る。
という流れで話を進めていますが、こうした出会い頭の事故においては自分がどれだけ注意していても、相手が必ずしも同じように注意しているわけではない可能性がある。
とも言えます。
なので、そういった意味を含めても交差点に入り込む前の一時停止・左右確認は重要となるわけです。
うっかり交差点に飛び込んでぶつかってしまった相手が大型トラックじゃないといいですね。
また、人間同士の衝突の場合は、相手が鋼鉄類や突起物を持っていなければいいですね。
『指差し確認を必ず行い、異常が無い事を確認してから操作に当たる』
指差し確認は機械系を扱う場合や危険物の取扱いを行う直前に必ず必要とされる行動の1つです。
会社によっては出張前の鞄内確認作業の1つとして義務付けられる事もありますね。
他には解錠や施錠、物の定位置確認、服装確認、特定空間に立ち入る際の足元確認なども存在します。
指差し確認行為は事故やトラブルが発生し易い場所や、1つの物忘れで大きな時間を消費してしまうような場面で利用されますが、正直、いちいち手間ですね。
そんな手間を手間と思ってか、そんな事すら思わないでか、多くの人は指差し確認を省略して次の工程に移る場合が多いですね。
何かをするには必ずその対象を目で直視する。
だからいちいち指差し確認をするまでもない。
そんな道理が浮かび上がりますが、案外人の脳とはそこまで高機能ではなく、往々にして見落としが発生するものです。
運転で言うところの『だろう運転』
指差し確認を怠る事で発生する労働災害も様々です。
そもそも指差し確認の存在意義は、広い視野に確認対象があった場合、その確認対象1点に意識を向ける行為です。
目で見て対象確認を中央に置いて直視し、確実に確認を行う…。
これも十分に可能ですが、1つの作業に複数の確認対象があったり、視野の中に複数の確認対象が含まれてしまうとどちらも同時に確認している様で全然確認できていないという場合もあるのです。
そんな矢先に労働災害が発生して言い訳に利用される言葉が次のもの。
『いや~…、確認したつもりだったんだけどなぁ…』
事故発生後、その説明といった場面で多くの過失者や被害者が苦し紛れに放つ言葉ですが、これって実は
『全く見ていませんでした☆』
って言っているのと同等なんですね。
機械系に限定して言うならば、僅かな異常で大惨事を招く場合があります。
そうなるともはや企業単位でも処理し切れなくなり、被害状況によっては再起不能となるケースも珍しくないものです。
ちなみにどうして指差し確認を避けたがる人が多いのか?
理由は単純。
- 恥ずかしい
- 見りゃわかる
- 面倒
妙なプライドを高く持つ人物ほど、上記3点が備わり易い傾向にあるようですね。
僕から言わせれば『せっかく見るのだから、その時点で指を差せばいい』なのですが、変なプライドが邪魔してそれが出来ない。
それで事故が発生した際の責任逃れに四苦八苦するのですから、変な話ですね。
余談ですが、こうした機械系のトラブルが発生した場合、問い掛けはこんな順番で進みます。
- 最近気になる問題はなかったか?
- 今回の運転開始時はどうだった?
- 開始前の状況だどうだった?
- 確認時はどうだった?
- どう確認した?
- その記録は?
事業所にもよりますが、こんな感じで過去から遡り、順番は前後するかもしれませんが最終的には『確認項目』に触れてきます。
指差し確認が義務図けられている場合はそこまで尋ねられ、場合によってはその順番まで再現するように求められるため、どれだけ上手に嘘をついてもそこで日常の動きが露呈する事になりますね。
録画映像なんてあればその場を凌げても、結局逃れ切る事は出来なくなります。
『目視による異常確認、稼働中の違和感を覚えた際には作業を中断し、責任者に知らせ出る』
『ンなバカな』なんて思うような当たり前の話ですが、これを無視する従業員は本当に多い印象です。
正直、製造機器の些細な異常発生は日常的であり、特に特定のトラブル原因を持つ機器のトラブル発生は『トラブルあっての正常』と感じる場合もままあります。
なので異常が発生しても作業を中断するどころか稼働中の機器に手を加え、作業の手を止めるどころか作業内容を増やしてまでもリアルタイムで処理するケースが多過ぎですね。
この場合に関しては作業員の面倒という気持ちもあるのでしょうが、そうしてしまうのは企業側とも受け取れます。
その原因は単純に『数字』ですね。
例えば1日に5000個の何かを生産する日程があったとしましょう。
その5000個を生産するには滞りない稼働が必要であり、1度でも生産ラインを止めてしまえば5000個に達せないギリギリの生産能力。
こんな限界に挑戦するような企業が本当に多い。
当然、稼働中に違和感を感じて報告しても、それを確認する時間がない。
目で見て異常アリと感じても、ラインを止めればノルマが達成不可能となり成績に響く。
だから品質の基準を満たしていれば、強引にでもラインを稼働させ続け、手が届く場所の処置で済むならば、稼働を止めずに手を伸ばす。
という行動になるわけです。
労働災害が発生しない方が不思議な話ですね。
ついでに言えば、中間管理職ほど大きな事故に見舞われる傾向が強めとも言えます。
いつでも一触即発
こうした企業は人間の限界を考えないどころか、可能な限り限界以上の能力を使う事を強制しがちです。
機械の稼働能力と人間の稼働能力を計算によって算出しているため、常に最良にしてスムーズな稼働をした場合の結果が通常生産能力として取り扱われる結果、どこかで不具合が起きた場合に一斉ダウンという事象に見舞われるわけです。
また、各能力を限界まで利用するため、定期点検などの時間も十分ではないケースが多々存在し、結果的には数字に人間が翻弄され、どこかで不具合が生じた事を切り口にそこかしこで不具合が確認されるという流れになるわけですね。
死亡労働災害の発生の多くは事業所責任者の采配によって変化します。
各事業所の責任者にリスク軽減の権利が与えられていないのであれば、企業責任者の采配がおかしいという話になります。
話が長引くのでザックリ表現しますが、単純に言えばこうです。
人間(生命)を重視するか? それとも数字(利益)を重視するか?
この選択肢のどちらを選んだかという結果論ですね。
この選択肢に顧客や社会的評価の概念は含まれません。
大体は管理者が個人の利益を気にした、この二択です。
だから通常業務がバランス重視の平均値ではなく、常に限界を追い求めるマックス数値となるわけです。
そしてそのマックス数値には機械の状態はもちろん、人間の体調管理も度外視されて当たり前と言った考えが常識となるようですね。
『些細な変化でも日報に書き記す』
記録を文字化するという行為は多くの人が可能とする証拠(証言)確保方法ですね。
大袈裟な物言いをするならば、古来から行われていた情報保存方法であり、紙と鉛筆を使用するローカルな手法こそ最大の保管手段であるとも言えます。
時代は何でもデータ化していますが、電子関係に不具合にが生じた時点で膨大な情報が一気に消し飛ぶ可能性もありますので、最終的にはローカル手段に勝る情報蓄積法は存在しないと個人的には考えます。
そして、そんな理由はとっくに知っている各企業では、毎日の日報データ化の同時進行で手書きによる日報の制作を行う場合も多々ありますね。
手書きによる日報作成は、ある見方をすると上層部に届かない声の発信源としても利用できます。
『些細な事』とは何も仕事に関する内容だけに留められた話ではなく、従業員の不満や要望なども書き示す事が可能な場所なんですね。
ところが、書くのが面倒という理由で『特になし』みたいな文字の記入で終わらせる事はありませんか?
労働災害発生時の発生理由として役立たずになる
手書きによる日報は定期的に読み返されたり、労働災害が発生した際の手がかりとして活用される場合があります。
労働災害の多くは突発的に発生するものではなく、日々の怠慢が度重なり、最後のトドメ的に発生する場合がほとんどです。
言い換えれば『成るべくして成った』という事ですね。
そんな労働災害が発生し、いざ履歴確認で日報を確認したら、ひたすら『特になし』の文字ばかり。
『特になし』の中で発生した労働災害となれば、それは偶発的に発生した労働災害としてしか認められず、実は重要な問題があるにも関わらず、誰にもお咎めなしで事が終了してしまうんですね。
その後はどうでしょう?
実は労働災害に関する問題があったのに偶発的な問題という事で処理されるため、現場への見直しはされず、同じ危険性をはらんだ状態で業務が再開される事になります。
もちろん、状況に変化がないので第2第3の被災者が出現するのは時間の問題でしょう。
気になった事は何でも記入する。
これも重要な証拠残しという名の仕事であり、義務付けられた安全ルールですよ。
安全ルールを破って得するのは誰? まとめ
非常に長い文面になりました。
お付き合い有難うございます。
書いていて正直疲れました。
でも、まだまだ書き足りないくらいですね。
ここまで内容に目を通す人なら『安全ルールを破って得するのは誰?』という質問に対する回答なんて必要ないのでしょうが、敢えて記しておきますね。
答えは『誰も得する人はいない』という事です。
正確には利益重視の企業代表だけは得するかもしれません。
しかし、それも一時的な話であって、1度トラブルが発生すれば、悪い意味で大きな見返りを受ける事は世の中のブラック企業が証明し続けています。
安全ルールを守らない事で大きな損失を被るのはあなたかも知れません。
同時にあなたに関係する同僚かも知れません。
更に同時に名前も知らない同じフィールド内の従業員かも知れません。
事故とは本当に無差別に被害を与える存在です。
そして同時に癒える事の無い精神的苦痛を植え付ける場合もあります。
ですがその発生源の多くは人間の怠慢によるものです。
日々、毎日、安全ルールを意識する事は正直言って面倒かつ辛い事でしょうが、一瞬で人生の暗転を迎える事故はいつどこで発生するかもわかりません。
自分の人生を明るい道にしたいのであれば、その面倒を常に意識する必要があるのですね。
もちろん、自分だけがルールに則っても意味はありません。
自分がそうならない為に、周囲に注意発信をする必要もあります。
注意発信。
これもまた、安全を意識した暗黙の中にある1つのルールとして意識したいですね。
何度も繰り返しますが、安全ルールを無視して得する人は誰も居ません。
そんな事ないよ。
と言い切れる人は、悲惨な労働災害を別世界の話と決め付けているだけと言い切れます。
そんな人に限って悪い転機に見舞われます。
それこそ自業自得という話ですが、出来ればそんな未来に遭遇したくはないですね。
という事で、せめて決められた安全ルールは守りましょう。
付け加えるならば、危険と感じた物事をルール化するような人物と見られるようになりましょう。
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