機械に頭を挟まれ頭蓋骨陥没
おはようございます! すえです!
仕事に限らず生きていればどこかで怪我には遭遇するものですが、多くは擦り傷やちょっとした切り傷に集中しているため、普段は事故の深刻性というものには意識する事がありません。
でもちょっとだけ先を考えてみたら、これって実はけっこう怖い事なんですね。
勢いが弱いから『擦り傷』で済む事故があるという事は、それ以上の強い勢いで同じ事故を考えた場合は『擦り傷』で済まされるでしょうか?
『切り傷』だって同じです。傷を受ける事になった原因の勢いや重量、速度がもっとあったならば、その『切り傷』はどこまで深いものとなったのでしょう?
このシリーズである
労働災害実例
安全を無視した結果に起きた労働災害
では、『その1』として既に書き表した『赤チン労災』以外はどれも重症度の高い実例を書き示しますので、内容によっては気分を害するものもあるかと思います。
しかし、未来に続く自分の人生を考えるのであれば安全に包まれた環境というよりも、安全を意識した心構えが無ければ始まらないもので、この意識に欠落がある人は高確率でいつの日か大きな事故に見舞われる事になってしまいます。
内容はその人の先の人生を思えば残酷な部分が多いですが、そういった実例があるからこそ安全の意識が高まる事もまた事実ですので、この先の内容を目にしてあなたがどう感じるかは自由ですが、少なくとも『同じ目に遭いたくはない』と思う事でしょう。
『事実があるからこそ意識付く』
変な話ですが、これもまた真実なのです。
繰り返しますが、気分が悪くなる内容であり、僕の見解もまた気分を害するかもしれません。
先を知る必要が無い方や、こういった内容は苦手とする方は戻る事をお勧めします。
重大労働災害1『頭蓋骨陥没事故』
とある製造工場で働いていた時の実話です。
被災者は同工場ではなく別の工場で事故に見舞われたそうですが、『よくあるライントラブル』の発生を知り、その解除中に頭を挟まれたようです。
以下はその流れと詳細です。
一部の製造ライントラブルから始まる事故
生産ラインの一部エリアを任せられていた従業員は『商品が挟まる』というトラブルに気付きました。
入社してから10年越えを果たす従業員でして、事故に遭遇した現場には3年目の勤務だったと記憶します。
1週間くらい勤務すればわかる事ですが、製造ラインのトラブルは別に珍しい事ではなく、担当エリアだけでもトラブル原因は無数にあるものです。
災害に遭遇した従業員がその時のトラブルの解消を試みたのは圧縮機でした。
製品圧縮機の中で複数の製品が詰まりを起こし、上から次々に降ってくるような形で製品が投入され、それをプレスされるものですから数分足らずでセンサーが異常を感知し、全ラインが緊急停止する事態に陥ります。
作業員はいつも通りに問題を解消すべく、慣れた手つきで詰まった商品を取り出すわけですが、夢中になって不良製品を外に出すうちに足を滑らせてしまったんですね。
これまでも解消中に足を滑らせる事態には見舞われていたようですが、その時はタイミングが悪く、頭上からプレス機が下降中だったようです。
気付けばヘルメット越しに頭部を機械に挟まれる形になっており、身動きが取れなくなってしまいました。頭だけが機械の中、残る体は機械の外、といった状態です。
圧縮機はその性質上、特定の場所まで降り切らなければ上昇してくれませんので、次に上昇するのは従業員が挟まれて動けなくなった位置から残りの120㎝下降する必要があり、そのためには不良商品もろとも従業員の頭部を圧し潰しつつ下がり切らなければ、上には戻らない。と言う事です。
言うまでも無く絶望的な状況ですね。
代償の大きい奇跡
結局、その従業員は奇跡的に助かりました。ライン上流から次々と降ってくる製品が限界ラインを突破し、緊急停止センサーが感知したからです。
全ラインの緊急停止を知った周囲の担当者が原因を調べようと下流に向かっていると、不自然に散らかった床面を見て停止の原因となったエリアを特定しますが、肝心の作業員の姿が見えません。
おかしいと思って圧縮機を見上げると、その途中で小さな窓口(詰まり製品取り出し口)に頭を突っ込んだ状態で気を失う担当者を発見し、急いで救出したという次第です。
現場に残された作業ヘルメットは圧縮の影響で割れる事は無かったものの、いびつに歪んでいたとの事でした。
事故の結果
救出された従業員は意識不明で病院に運ばれた後、1週間ほどで意識を取り戻したようです。
脳には異常が認められなかったものの、頭蓋骨陥没により頭部がゆがみ、片目がやや飛び出した状態が普通となり、首の骨も変形したみたいで正面を見る事が苦労するようになったとの事です。
最終的な入院期間は僕が先に会社を辞めてしまったため不明でしたが、その中の業務連絡で経過報告が6か月間ほど続いたのち、その経過報告も途絶えてしまいました。
いずれにしても対象の従業員は生きることに問題はありませんが、社内では大きなレッテルを貼られる原因になったでしょうし、『見た目』から判断される部分にも大きな問題を抱えるに至った事でしょう。
こうすれば事故は免れた
製造ラインには様々な規則事がありました。
人間技では不可能な数を一気に生産可能にするのが生産ラインですが、その分、人間の力では及ばない危険も数多く存在しています。
あらゆるトラブル発生時には必ず該当するラインを停止する事が義務付けられていましたが、この従業員はそれを行わずに稼働中の圧縮機から不良製品を取り除く事で毎回場を凌いでいたんですね。
人はどれだけ気を遣っていたとしても、どこかでミスをする生き物ですから、この事故は『起こるべくして起こった事故』と表現できます。
その起こるべき事故が発生したのが彼にとって『現場勤務3年目という時期だった』。という話でして、過去に足を滑らせた経験がある事からもっと早期に発生していてもおかしくない事故でもあったわけですね。
会社や仲間うちといったしがらみの問題ではなく、まず自分を守る術としてライン停止ボタンは押すべきであって、完全に停止を確認した後に不良商品を取り出せば事故は発生しなかったと言うわけです。
なお、被災従業員が挟まれていた推定時間は約2分間。
この2分間の悪夢で彼の人生は喜べない方向に激変したという事になります。
今回のあとがき
どの会社、どの事業所でもその内容に沿ったトラブルは付き物です。
製造工場の製造ラインで勤務していれば、製造ラインのトラブルが『よくあるトラブル』という事になりますね。
数時間に数百・数千・数万と商品が作る事が出来る所が製造ラインの最大の魅力ですが、トラブルによる数分のライン停止が数百・数千という予定生産数の歯止めを掛ける原因にもなるため、作業者の多くは『早く復旧する』という意識のもとで行動しますが、そもそもその考えが事故の発生源と僕は考えます。
仮に早く復旧するという意識で1分2分を稼げたとしても、こうした重大事故が発生すれば数時間から数日間の停止を余儀なくされるわけですから、意味が無いどころか逆効果でしかありません。
これを読むあなたはこんな事が無いようにしてくださいね。
すえ
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