悪さの告白 正義ぶった考えが大惨事に発展 その3

1.81 様々な人たち

犯罪行為の後の人生確保の最善とは?

おはようございます! すえです!

『無銭飲食』から始まった一連の出来事は大詰めとなり、残すは各個人への処分言い渡しと、その間までに設けられた時間内での親への打ち明け行為でした。

こう言っては何ですが、僕の家庭は一家離散状態にあり、アルバイトで得た収入で妹2人を含めた生活費と学費を賄っていたのですが、まあ、事が事と言うだけに普段は家に帰らない父親を自宅に呼び出し(この辺が家族としておかしい…)、事の真相を打ち明けました。

悪さの告白 正義ぶった考えが大惨事に発展 その3

父親への打ち明け行為は僕にとって大きな問題ではありませんでした。

というのも、事実は事実であって、隠していてもいずれ判明する事が明らかという点を考えれば、むしろ早く伝えてしまって今後の処分を受け入れる態勢を整えた方が得策に思えたのです。

その一方で、一般的に『普通』という表現かそれ以上の家庭環境下にある関与者の苦悩を考えると、そちらの方が気になりました。

普通は『家族』と言えば、1つの屋根の下に身内が寄せ集まるものですね。

見慣れた互いの生活感を親視点で察するあたり、学生さながら学校に行き、アルバイトに行き、宿題をして、合間に遊ぶ…。

というのがいたって普通の考え方でしょう。

毎日姿を見せる自分の子供に対し、どこの親が『知らない所で犯罪行為をしている』と考えるのでしょう。…という話です。

そんな親の気心を裏切る会話を自分から打ち明ける行為は、考えるだけで怖いですね。

処分当日

僕が連絡を受けたのは『深夜店長』の自宅を探し当てた、その日の夕方でした。

処分確認の為の訪問先は隣県の駅近くで、会社の教育センターで面談という形で話を進めるとの事です。

会社側から請求を受けた金額等はありませんでしたが、記憶する限りの12000円と、何らかの見落としを考慮した6000円を封筒に収め、時間前に最寄りの駅出発しました。

冬に似合わない非常に日差しの強い日中だった事を覚えています。

緊張感を感じさせない緊張感

僕の性格はのほほんタイプとでも表現すれば良いのか、どういった状況下でも楽観的に物事を考える思考の持ち主だと思います。

なので、これからどういった処分が下され、例えば予想外の事態に見舞われる事も想像の範囲内でしたが、考えたところでまだ結果を見たわけでもない今現在では時間の無駄という事もあり、状況は状況であっても『せっかくなのだから』と、初めて見る町並みを楽しんでいたりしました。

…で、目的地と思われたコンビニに入り込むと、何やらこれまでとは見違えるような品揃え…。

なるほど、店が異なれば同じチェーン店でも内容が少々異なるものですが、県をまたぐと取り扱う商品さえ異なってくるのか…。

なんて、ここでも楽観的思考。

で、教育センターへの入り口が分からなかったもので、レジに立つアルバイトさんに尋ねてみると、みんな一様に『??』の表情。

あれ? と思って姿をよく確認すると、入り込む店自体がライバルチェーン店でした。…どうりで取り扱い商品が全品異なったわけです…。

まあ、楽観的思考の持ち主でも店舗入り口のカタカナを読み違えるような緊張はしていたという事ですね。恥ずかしかった…。

ブロックマネージャーの待ち構える教育センター

思わぬ失敗をした後の目的地到着。

偶然、店内を視察していたブロックマネージャーの目に留まり、そのままセンター内部に導かれました。

『ここへはすぐ来れたかい?』

という質問に対し、素直に店を間違えたと答えると、彼は思わぬ返答に彼らしい高笑いで応じてくれましたが、それ以外のマネージャーさんの顔には緊張が走っているようでした。

ここからは当時の会話が軸となりますので、

ブロックマネージャーの言葉を『橙色』
僕の言葉を『緑色』

で書き表します。

処分の前置き

僕が促された席に着き、正面にブロックマネージャーが座ります。

『じゃあ、ここからはマジメな話だ。結果は既に君自身が持ち込んでいる。覚悟はいいかい?』

彼の質問の中の『自分が持ち込んだ結果』というのは察しがつきました。

きちんと親にこの事を説明したかどうか?』

という、これまでの猶予期間内に要件を実行したかどうかの質問であり、ここではそれはもう出来ないという確認でした。

僕は『はい』とだけ答えると、彼は僕よりも前に訪問し、それぞれに処分を受けた関与者の結果を聞かされました。

まず、『深夜店長』は既に警察に引き渡され、今後の方針を会社と彼の両親で進めているようでした。

2番目の処分者は知らない関係者でしたが、親に確認を取ったところ、親が知っていたという事で要件を実行したと判断し、今後は店に近付かない事を条件に警察の引き渡し行為は発生しなかったとの事です。

3番目の関係者は聴取時に偶然買い物に来た夜帯の同僚でしたが、彼はこの場で同様の質問に対して『はい』と答えておきながら、いざ親に確認を取ると親は知らされていない事が判明。

まさか本当に連絡をするつもりが無いと思っていたのか、それとも仮にバレても警察沙汰にはならないと踏んでいたのか、いずれにせよ彼は嘘をついた事となり、約束通りに警察へと引き渡されたという話です。

そして4番目が僕のようでした。

ブロックマネージャーは一回、書面に目を通して話を続けます。

こうしたやり取りのマニュアルなのか、話の節目に何度かこうした姿を見ました。

『…まず、すえ君は会社の期待を裏切った事に自覚があるという事は、自分から正直に真実を打ち明けてくれたことで関係者全員が確認しているとします。

聴取の際に得た情報は、すえ君自身が無銭飲食をする事で、本来会社が得るべきだった収入の損失金額は約12000円。これは覚えているよね?

…で、会社側としてはあえてこの金額に対して要求しなかったわけですが、すえ君が正常な人格の持ち主である場合、こうした状況ではどういった行動を起こすのが普通だと思うかな?』

僕は言葉よりも先に封筒を取り出し、それを彼に向けて提出します。

彼は黙って封筒の中身を確認すると、再び現金を封筒に仕舞って僕の目の前にスライドしました。

『入っていた金額は18000円。…6000円多いようだが、これはどうしてかな?』

『12000円という金額は当時の話の中で判明した金額ですから、もしかすると僕の忘れている所で足りない事実があるといけないと思って…、そのための追加(補填の言葉を知らなかった)です』

『嘘をついていたのかな?』

『嘘はついていません。でも、あの時言った無銭飲食についてはあくまで思い出せる限りという事です。忘れている内容があった場合、それがイヤなんです』

『…わかった。それならその差額分はすえ君の気持ちという事で受け取ろう。

でも、そのお金は会社側では受け取らない事に決定した』

『?』

『理由は幾つかあるが、もっとも大きな原因は担当マネージャーの監督不行き届きが招いた事であり、その上司という立場である俺の監督不行き届きでもある。

だから今回の被害総額の半分は会社で受け持つ事になり、そのうちの25%を会社で、残りの25%の半分の12.5%ずつを俺と担当マネージャーで補填する事になり、残る半分は『深夜店長』から取るつもりだ。

別の理由としては、すえ君を含む今回の関与者の全員が『深夜店長から勧められた・許された』という所がポイントで、
仮に深夜店長が店の商品の無銭飲食や持ち出しを許可しなかった場合には、この問題は無かった事になる。そうだよね?』

『はい』

『なら、今回の関与者の全員はある意味で犠牲者という事にもなるんだ。騙されたって意味でね。

そして会社の教育の中には『商品を取ってはいけない』という事を伝えていなかったため、これも問題だったんだ。

他人のものは取らない。…って、すごく当たり前な話なんだけど、当たり前だから言わなくてもいいや。っていうのはちょっと違う事にも気付いていたし、事実、今回の件に限らず関係者の無銭飲食は多いのも確かなんだ。

今回は1店舗の被害総額が飛びぬけて大きかったから、こうして会社が動く事態になったけど、小さな被害も合わせれば60万どころの被害じゃない事は毎回の問題でもあるんだよね。

だから俺や担当マネージャーが補填する金額は一種の『勉強代』と思ってくれていい。アルバイトとは違う給料形態だから、そこは社員の強みという事で関与者が気にする事ではない。』

『……………はい』

『よし。じゃあ、ここからが君にとっての本題だ。…ちゃんと両親にはこの事を伝えたかい?』

『家族がバラバラの状態で母親は行方不明、妹2人に言っても仕方が無さそうなので、父親を呼び出してこの事を伝えました』

『なんか知らないけど大変らしいね。…でも、これは仕事という事で結果がどうなっても諦めてくれな。
全てはすえ君自身の起こした行動の結果であり、俺たちからすれば、単に仕事の一環なんだ。…電話確認するよ?』

『はい』

実はこの時、父親に事実は打ち明けたものの、肝心の父親が電話を取るかどうかの方が遥かに心配でした。

…が、その心配は幸いにも不要でしたね。

処分決定

『確認したら、すえ君はきちんと親にこの事を伝えていた事が確認できたよ。親父さん、謝っていたよ。

すえ君の家庭事情は複雑らしいけど、残念ながら俺たち部外者が気にする事ではない。

でも、すえ君は実際に自分を生んだ親の顔に泥を塗ったという事を重々自覚し、この事を絶対に忘れないで欲しい』

『はい』

『すえ君の処分を言い渡す。

まず、残念ながら深夜業務はこの時間をもって解雇とし、同時に同店舗の入店を禁止する。買い物客として入る事もダメだ。

これまで働いた分の最後の給料は支払われるので、そこは心配しなくてもいい。働いて得た給料と無銭飲食の件は全く別物なんだ。

被害総額の補填についてはさっきも言ったが、主犯が半分、残る半分を会社側が受ける事で主犯以外の関与者は全面免除。

主な理由は会社側の監督不行き届きが招いた事故という扱いと、関与者は会社規定の事実を知らなかった事に起因するからだ。

他には個人情報の載ったすえ君の履歴書をブラックリストとして会社に保管するから、コンビニに限らずグループ会社の全てに就職は生涯不可能という事になる。
すえ君が仮にどれだけ有能ではあっても、採用される事は無いので就職活動の時には無駄な時間を作らないように注意してくれ。

約束通りこちらの要件を期限内に実行していたので、警察に突き出す事はしないから前科は付かない。
でも、すえ君の記憶にはこの事が残ると思うから、他の企業で働く場合には今回の経験を思い出し、同じ間違いをしないように注意して欲しい。

以上!』

少しも目線を外さないブロックマネージャーの言葉は今も印象強く、当時では理解できなかった言葉の断片が時間を経て重みを増していますね。

今回のあとがき

こうして僕を含めた無銭飲食の問題は終了しました。

従業員だからこそ手に届く範囲の商品に手を付ける事は実に簡単で、監視カメラから逃れるにも大きな思考は必要ありません。

しかし、安易に口にした商品の代償は非常に大きく、結果的に『何事も無かったフリ』をしてくれた会社側の反応ではありましたが、記憶は嘘をつく事が出来ず、こうして鮮明に僕の脳裏に刻まれる結果ともなっています。

ブロックマネージャーの最後の言葉が本当に印象深いのですが、教育センターの部屋から出る際の最後の言葉がこうでした。

『そうそう、解雇時点ですえ君と俺たち会社の人間は赤の他人になる。…悪いがその辺で姿を見ても、話しかけないでくれ。謝罪も要らない。…まだ若い。元気でな』

ある意味でこのブロックマネージャーさんは僕を気に掛けてくれている事は入社当時から理解していました。最後の別れの言葉は僕にとって実に感慨深いものです。

知ってしまった相手から『赤の他人』と表現されるのは、けっこう残酷な話ではありますが、実際に一番心を痛めるのはそう言い放つブロックマネージャーさんなのかも知れませんね。

 

後日談と言う訳でもありませんが、約2年後に偶然『深夜店長』と遭遇しました。

会社側は僕たちの告白を彼に伝えていなかったようで、彼自身は運が悪かったと言っていましたね。

触り程度にその後の話を聞くと、朝早くにコンビニ関係者が10人以上で家に乗り込んで来て、警察も数人同行していたため逃げる事もできなかったとか。

請求された金額は約30万と折り畳みコンテナを移動するためにレンタルしたトラックのレンタル料金とかで、実家を取り巻いての大騒ぎになったようで…。

まあ、彼の中では僕たち関与者の全てが警察に届けられたという話になていたようなので、僕も『大変だったよ』とだけ返し、やんわりとその場を離れましたね。

当時はふっくらとしていた体形の『深夜店長』でしたが、再会時にはだいぶやつれていましたね。

人の事は言えませんが、悪い事はしないに限ります。そんなお話でした。

 

すえ

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