清掃中に裁断加工機が作動して指2本切断
こんにちは! すえです!
仕事に限らず生きていればどこかで怪我には遭遇するものですが、多くは擦り傷やちょっとした切り傷に集中しているため、普段は事故の深刻性というものには意識する事がありません。
でもちょっとだけ先を考えてみたら、これって実はけっこう怖い事なんですね。
勢いが弱いから『擦り傷』で済む事故があるという事は、それ以上の強い勢いで同じ事故を考えた場合は『擦り傷』で済まされるでしょうか?
『切り傷』だって同じです。傷を受ける事になった原因の勢いや重量、速度がもっとあったならば、その『切り傷』はどこまで深いものとなったのでしょう?
このシリーズである
労働災害実例
安全を無視した結果に起きた労働災害
では、『その1』として既に書き表した『赤チン労災』以外はどれも重症度の高い実例を書き示しますので、内容によっては気分を害するものもあるかと思います。
しかし、未来に続く自分の人生を考えるのであれば安全に包まれた環境というよりも、安全を意識した心構えが無ければ始まらないもので、この意識に欠落がある人は高確率でいつの日か大きな事故に見舞われる事になってしまいます。
内容はその人の先の人生を思えば残酷な部分が多いですが、そういった実例があるからこそ安全の意識が高まる事もまた事実ですので、この先の内容を目にしてあなたがどう感じるかは自由ですが、少なくとも『同じ目に遭いたくはない』と思う事でしょう。
『事実があるからこそ意識付く』
変な話ですが、これもまた真実なのです。
繰り返しますが、気分が悪くなる内容であり、僕の見解もまた気分を害するかもしれません。
先を知る必要が無い方や、こういった内容は苦手とする方は戻る事をお勧めします。
重大労働災害2『右手指2本の切断事故』
こちらも製造工場で働いていた時の実話でして、隣の建屋の出来事です。
簡単にはライン清掃中のトラブルから発生した指の切断事故となります。
以下はその流れと詳細です。
『清掃中』という名の油断が招いた事故
生産工場は生産する製品の切り替えや、一定期間の生産停止期間などに集中的な清掃を行う場合があります。
常時稼働しているラインですので、こういった時にしか精密な清掃ができないという理由があるんですね。
班ごとに分かれた清掃中に、ライン上の裁断機に粘りが付着しているため、従業員がその除去に取り掛かろうとした際に事故は発生しました。
ラインの裁断機はビニールシートを切る目的の物ですが、ビニール内部の製品を包む意味から粘り気のある接着剤も一緒に裁断するのです。
長時間に渡る作業において裁断機の刃部分には接着剤が付着する事がままあり、これらの除去は精密清掃中に除去するのが通常でして、この日もそれは同じでした。
被災者は日頃からこの裁断機を担当する人物でしたが、稼働中のトラブル発生時には安全棒を利用して除去していた彼が、清掃により『停止中のライン』と判断したためか、素手で清掃を開始しようとしたのがそもそもの誤りでした。
ラインそのものは運転が停止されていましたが、そこに付随する部分部分の稼働機は通電されたままの状態だったのです。
彼がベルトライン上に寝そべって接着剤の除去を開始しようとした時、センサーが感知して裁断機が作動したという流れです。
約0.01秒の出来事
ライン上を流れるビニールを切る裁断機は『ビニールを切る為』という割には予想以上の力と素早さを要します。
単に敷かれたビニールを切る目的であるならば素早い動作も力もさほど必要ではないでしょうが、流れるビニールを切るのであれば話は別です。
というのも、裁断中にもラインは稼働しており、製品が常に流れてくるからです。
刃の動作が遅ければビニールと一緒に流れてくる背の高い製品に当たってしまい、すなわちライントラブルに直結してしまうのです。
これを回避するためには刃の下降・上昇共に早さが求められ、切り損ねを防ぐ意味合いも含まって数ミリの鉄板くらいなら簡単に切断できるような力が必要になる訳ですね。
もちろん、相手が鉄でも簡単に切断できる代物ですから、人体など硬さのうちに入らないような存在とも言えるでしょう。
センサー感知後、裁断機は設定通りの0.8秒後に動作を始め、約0.01秒という時間の中で縦幅40センチほどの上下運動をした結果、そこに差し出された作業員の右手の薬指と小指を切断したのです。
しかし、これはまだ運が良い方です。作業員の動作がもう少し早ければ腕を持っていかれた可能性も十分に考えられた事ですし、目で確認しようと近付いた場合には顔が真っ二つになる所でしたからね。
事故の結果
体の一部が切断した場合、その切り口が清潔であれば素早く処置する事でくっつける事が可能と言われますが、この作業員にはいくつかの不運が付いて回りました。
まず、海外からの出稼ぎと言う事で日本語を使う事が出来なかった所に最大の問題がありました。
同時に気の知れた日本人は異なる建屋で清掃していたため、その場には居なかったという事。
あまりにも素早い裁断機の動作に『痛み』が感じられなく、何が起きたかを理解するのに被災者自身が時間を要した事。
裁断機の作動に反応して手を引いたが、その場に残された指の意味が理解できなかった事。
指を切断された事を理解した際、呆然としてしまった事…。
数分後、ライン上に残された指と血液に気付いた同僚たちが急いで救急車を呼んだそうですが、真夏の暑さもあって切断された指は鮮度を失い、どうにか縫合を試みましたが結局は腐って落ちてしまったとの事でした。
こうすれば事故は免れた
まず、製造中だろうが清掃中だろうが安全確認を怠ったのが第一の原因と思われます。
せっかく安全棒があるのであれば、最終的に自身が入り込む事になったとしても動作チェックくらいは行うべきと思います。
しかしそれ以上に重要なのは、電源チェックですかね。
動作確認をするまでも無く電源のオンオフで状態が確認できるのですから、これを行わないで身を投じるとは単なる自殺行為でしかありません。
厳密に言えば電源を落としても配線などに残された電気があり、これが作動に十分な力が残されている場合、1~数回の余力がある事になりますから、やはり電源オフの確認後に安全棒とセンサーを活用して裁断機の挙動を伺う事が安全への最低条件だったと言えるでしょう。
本人にとっては『迂闊』といった表現1つでは覆い切れない事故でしょうね。彼ははるばる海を越えてまで日本に辿り着き、祖国との物価の差はどうあれアルバイト賃金を得るために指を落としに来たのです。
今回のあとがき
工場関係は安全対策がこの上なくうるさい程に叫ばれます。
というのも、事務職や接客職とは異なり一度の失敗が取り返しのつかない事態に陥る事が多いからなんですね。
もちろんそんな工場でも事務職や接客業には無い楽しさやメリットというものがたくさんありますが、事故に関する失敗だけは『軽微・重度、もしくは死亡』の極端な3択となってしまうのです。
失敗しても時間やお金が回復させてくれる内容は沢山ありますが、失ったものが体の一部と言う事であれば、その時点で元通りにはなりませんからね。
十分に注意しましょう。…と言うより、当たり前の注意を身に付けましょう。
これを読むあなたはこんな事が無いようにしてくださいね。
すえ
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