肉体労働における安全対策の天敵3『無知識』
多くの企業が実践する安全対策の中の問題点を書き表しています。
個人的な意見ですが、現在の先進国は人命尊重の在り方を重要視する意味での分岐点に差し掛かっていると言えるでしょう。
数十年前の戦時中・戦後・高度成長期といった、まだ未熟だった法の中での安全意識から、今現在は先進国としての人命尊重優先となった法の確立によって、安全の考え方そのものが大きく変わった…。
というよりも、大きく変わりつつあるのが今現在の安全を意識した働き方と表現できると思います。
早い話が働く上での安全意識の大きな変換機の中に今の労働者は立たされているわけですが、一言に『労働者』と括られる中には
- 古い安全意識を持ち、更新によって廃れた過去の安全対策を今も通す古参層
- 安全意識が声高に言われ始め、新旧の安全意識を知識として有する中間層
- 最新の安全意識の教育のみを受け、過去の安全知識を有しない若年層
これら3つの層が入り混じる状況となっていますね。
時代の変化によって安全に関する意識付けも当然ながら変化しますが、残念ながら古くから意識していた過去の安全を、今現在の新しい安全意識スタイルに変更するにはなかなか難しいらしく、古いままの安全意識のまま業務に取り組む従業員も残念ながら少なくありません。
同時に、利益に直結する業務優先を最も意識する多くの企業の本心として、次々と変化する安全対策の講義を行い切れないと考えるケースも少なくないようですね。
非常に辛辣な表現をすれば、人を守る為の安全意識であっても、変更前や改変前の古い安全意識を用いる場合は、これは今現在の安全意識と比較して『劣る』のではなく、『無知識』というほか無いように思えます。
何故なら、これまで当然だった安全意識に欠陥があったからこそ、新しい安全対策が考慮されたり、新たな危険の可能性が見付けられたからこそ安全対策が更新されるからです。
安全対策の更新を行わないという事は、すなわち『役に立たない安全対策』を正面から信じているという話になってしまい、結果的に労働災害の多発するブラック企業化して当然とも言えますね。
『安全対策への無知識』から成る企業には、どんな危険性が存在するのか?
そんな事を簡単に紹介したいと思います。
肉体労働における安全対策の天敵3『無知識』
肉体労働上の安全に関する無知識の危険性とは?
まずはそこから説明します。
安全対策 安全に関する無知識作業
一概には言えず、または全てを書き切る事は難しいですが、例えば肉体作業の現場方面で安全意識に欠落があったり、安全意識そのものに無知だった場合の代表的リスクを説明します。
建設業界
建設現場では素人の目から見ても高所作業や重機の操作など、多くの危険が伴いますね。
安全に無知識な労働者は作業方法や安全装置の使い方を理解していないため、転落や機械による事故などのリスクが高まります。
また、仕事の内容上、現場周辺には無関係な通行人が往来する事も珍しくはなく、ちょっとした原因から大事故に繋がるケースが少なくなく、むしろ発生の先がほぼ大事故と言って過言ではないでしょう。
たった1つの労働災害の発生が現場業務の中断を誘発するほか、場合によっては同じ敷地内で同時進行する他企業への業務停止、その他にも現場出入口封鎖による全体的な業務停止、更には事故現場保管と検証という意味合いで、周辺交通機関の規制・制限・封鎖など、1件の事故という言葉からはあまり考える事の無い大きな問題に繋がる事も考えられます。
農業
農業では農薬の取り扱いや、機械の操作などが危険を伴いますね。
安全に無知識な労働者は農薬の適切な使用方法や機械の安全な使い方を知らないため、中毒や事故につながる可能性があります。
また、農業に必ず使われる農薬には非常に強い毒性を持つ場合もあるため、ちょっとした不始末が原因による時間差災害の発生も考えられます。
特に農業の多くは作業現場に無関係者の立ち入る空間も多く、例えば帰省により身内が増えた際、農業知識が全くない親族の子供がイタズラして事故に繋がるケースも耳にする事が。
企業のように多人数が組織化されての農業でもありませんので、もしかすると一番安全に意識しなければいけない職業の1つかも知れませんね。
工場
工場での肉体労働には、機械の運転や化学物質の取り扱いなどがあり、この辺りはわざわざ説明する必要もない存在感でしょう。
そんな中で安全に無知識な労働者は、機械や化学物質のリスクを理解していないため、事故や健康被害が起こる可能性が高まります。
防護服がなぜ存在するのか?
判り切った製品を作るために、どうして手順を順守する必要があるのか?
安全への配慮の軽視ではなく、無知識とはずる賢さとは正反対の素直さが原因で発生する労働災害でもあると、個人的には考えますね。
以上のように、肉体労働における安全対策は、労働者の生命や健康を守るために非常に重要ですが、一部の作業においては周囲の安全の確保という意味でも重要になります。
労働者自身が安全対策に関する知識を身につけることが、リスクを減らす上で重要ですが、安全に対して無知識な管理者が指揮を執っているケースも多い事に、労働災害の発生件数が減らない理由が大きな理由となっている場合があります。
安全に無知識または無関心な指揮者の統率
では続いて、安全に関して無知識または無関心な指揮者のもとで働いた場合、実際に働く中でどんなリスクがあるかを簡単に説明します。
1:労働者の安全が脅かされる可能性
無知な上司が適切な安全対策を講じない場合、それだけで労働者の安全が脅かされる可能性があります。
例えば、適切な保護具の着用や作業環境の整備、適切な作業手順の確立などが怠られると、労働者が労働災害や健康被害に遭うリスクが高まります。
2:法的なコンプライアンスの違反
労働環境に関する法的な規制や法律を遵守しない場合、企業や組織は法的なコンプライアンスの違反にさらされる可能性があります。
無知な上司が適切な安全対策を講じないことで、法的なリスクが増大し、法律上の責任を問われる可能性があります。
3:労働者の不満や労働環境の悪化
労働者が安全に対する十分な配慮を受けない場合、労働者の不満や労働環境の悪化が生じる可能性があります。
これにより、労働者のモラールやモチベーションが低下し、労働現場の効率や生産性が低下する可能性があります。
4:労災や労働者健康への悪影響
無知な上司が適切な安全対策を講じないことで、労働災害が発生し、労働者の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
労働災害による労災申請や補償の増加、労働者の健康被害による医療費や労災保険の増加など、企業や組織に経済的な負担がかかる可能性があります。
5:組織の評判への悪影響
安全対策が不十分な状態で労働災害が発生し、組織の評判に悪影響を及ぼす可能性があります。
労働者や関係者からの批判や非難、メディアや社会的な注目を集めることで、組織の信頼性や信用が損なわれる可能性があります。
これは、組織のブランドイメージや取引先との関係に悪影響を及ぼし、経済的な損失につながる可能性があります。
6:労働規制や監督機関からの制裁
労働環境に関する法的な規制や監督機関からの監査により、無知な上司が適切な安全対策を講じないことが発覚した場合、制裁を受ける可能性があります。
これにより、組織は罰金や制裁金の支払い、労働規制や法的な制限の厳格化、業務の停止や撤退などの経済的な損失を被る可能性があります。
安全対策 安全に無知識または無関心な指揮者の統率を変えるには?
安全への無関心・無知識は、企業にとってもいち従業員にとっても重大な内容です。
考えられる対策はたくさんありますが、特に重要と考える『安全対策の第一歩』を幾つか書き留めておきますね。
1:教育・訓練プログラムの実施
上司や管理職に対して、労働安全や労働衛生に関する教育・訓練プログラムを実施することで、安全意識の向上や適切な安全対策の理解を促進することができます。
労働安全に関する法律や規制の解説、安全な作業方法のトレーニング、事故や災害の事例の紹介などを通じて、上司に安全の重要性を理解させることができます。
2:安全管理体制の強化
組織内に適切な安全管理体制を構築し、上司が労働安全に対する責任を果たせるようにすることが重要です。
安全管理体制には、安全管理部署の強化、安全対策を監督する役割を持つ部門の設置、安全報告・連絡・相談体制の整備、安全指標の設定やモニタリングなどが含まれます。
これにより、上司が労働安全に対する責任を自覚し、安全対策を講じる仕組みを整えることができます。
3:コミュニケーションの促進
上司や労働者との定期的なコミュニケーションを促進することで、安全に関する情報の共有や意識の啓発を行うことができます。
上司が労働者の声を聴き、労働者が安全に関する懸念や提案をしやすい雰囲気を作ることで、労働者の安全意識を高めることができます。
4:安全対策の強制と監査
組織内のルールや規則を厳守し、安全対策を徹底するための強制措置を講じることが必要です。
定期的な安全監査や点検を行い、不適切な安全対策があれば是正措置を行うことで、上司に対する安全対策の徹底を図ることができます。
また、安全対策に対する報奨や罰則の導入などを検討することも効果的です。
5:上層部の関与
上層部の関与が重要です。
経営陣や組織のトップが労働安全に対するコミットメントを示し、安全対策を推進する姿勢を持つことが必要です。
上層部が安全対策を重要な経営課題として位置づけ、リーダーシップを発揮することで、組織全体の安全意識を高めることができます。
6:社内文化の改善
安全意識を根付かせるために、組織の文化を見直し、安全を重視する社内文化を醸成することが重要です。
労働者が自ら安全対策を意識し、適切な判断や行動ができるような風土を作ることで、上司も自然と安全対策を講じるようになります。
肉体労働における安全対策の天敵1『無知識』まとめ
という事で、安全知識を持たない状態や、安全対策そのものに無関心な職場で確実な安全対策の確保は難しいでしょう。
しかし、急激に変化する時代背景で、旧式の安全対策のままチームの指揮を執る上司は少なくありません。
なので、ここが一番重要なのですが、安全意識に無頓着な上司に対する対策として、教育・訓練プログラムの実施、安全管理体制の強化、コミュニケーションの促進、安全対策の強制と監査、上層部の関与、社内文化の実施こそが、安全対策の第一歩となるとしか言いようがありませんね。
これらの対策を総合的に実施することで、組織全体の安全意識を向上させ、労働安全を確保することができます。
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