どんな相手であっても迷惑を被らなければ『お客様』という一例
こんにちは! すえです!
僕個人は働く先の職種を選ぶ事が無く、与えられた内容が仕事であるならば、可能な限り実践してみようという考えの持ち主です。
今回の出来事は学生時代のとあるコンビニエンスストアーで深夜勤務中の出来事であって、ある意味で『結局は人間なんだなぁ~』と感じさせられた出来事です。
まあ、初めに言ってしまえば、あまり印象の良い話ではないかもしれませんが、言い換えれば全てを平等な視線で見やるという意味で重要なお話かもしれません。
まあ、最終的な判断は読み手の自由という事です。
予告なしにやって来た『プリンおじさん』
平和というか、何事も無いというか、いつもの深夜業務中にその人は唐突にやってきました。
なんだか『普通』とは明らかに異なる雰囲気を醸し出した真っ黒な高級外国車が狭い駐車場に1台…2台…3台…(汗)。この時点で不安感はMAXです。
アレ…? うちの従業員、何かやらかした???
とか思いつつ、怖さを紛らわせるために同僚に『なんだろうねぇ~?』と尋ねようとしたら、その同僚は裏に隠れちゃうし…。いきなり正念場?
一瞬にして店内が不穏な空気に…
幸いなのは店内に入客がゼロだったという事でしょうか。
いかにもな貫禄を持つ高齢間近なおじさんと、その左右に若手の2人が付き、やや遅れて2人が後を付き………、いやいやいや、何なのアナタたち⁉
とか、心でツッコミを入れつつも冷静を保つ事で必死の僕。
ここで店内にお客さんが居たら、きっとそそくさと店を出てしまった事は容易に察しが付くものですね。ついでに僕自身も出ていきたい気持ちです。
合計5人の本来招かざるお客さん(予定)たちは、ただ店の商品を目で物色する事に専念しているようで、主に食品関係を中心に見て回っているご様子…。
でも、実際に商品を気にしているのは貫禄満点のおじさん1人で、周囲の4人は外の車や僕一人の挙動を気にしている様子。
まあ、僕の挙動とは言っても『ボケっとして突っ立っている』というよりは『想像外の出来事に対して頭真っ白』という状態でしたので、目線で周囲を伺う事で精一杯でしたがね。同僚は逃げるし…。
気になる所は3台の車で7台分の駐車スペースを全て使い切っている所であり、あの状態では後続のお客さんが来た場合に駐車場が使えない所でした。
まあ、それぞれの車内にも何人かの人影が見えたので、ただでさえ異常な状況を悪化するつもりはありませんでしたけどね。
プリンおじさんのターゲット
常々感じていた事でしたが、このコンビニオリジナル商品の最大の魅力は今で表現する『スウィーツ』、つまりはデザートの事ですね。味もそうなんですが、見た目が非常にエレガントというか…。それとパスタ系。
貫禄十分なおじさんもデザートコーナーで足を止め、何やら側近のお兄さんとゴニョゴニョ話しているのが分かりました。
…で、十分不穏な空気を隠し切れる筈もない状況の中、何とか存在感を消すように努力するようなひそひそ話ではありましたが、まあ、紋付き袴の姿の時点でそれは無理という話でして…。
やがて話が終わるとおじさん本人がレジにやって来て、僕に言いました。
『勤務ご苦労様。こんな時間にすいません。あそこのプリン、他にもありますか? 全部で36個』
はい、この人『プリンおじさんに決定…』。逃げ場のない僕は脳内の自分たちとそう決定付けました。
側近:『37個です』
おじさん:『あ…そうか、自分の分を忘れてた。…で、ありますか? 37個』
増えたし…。
コンビニの商品というものは24時間営業という点を活かした『常に新鮮を』という考えから、豊富な在庫確保というよりはどちらかと言うと最低限+αの品数で挑む傾向が当時にはあり、現在のような廃棄処分当たり前の経営方針とはワケが違ったわけなんですね。
デザートはお弁当のおまけ的存在ですので、お弁当と比較すれば売り上げの伸びは低く、特に深夜帯では顕著にその違いが表れていたため、在庫は売り場に出ているものが全てという事がほとんどであり、予備在庫の概念は無かったのです。
ですので、突然の来客でそんな数を揃えられる筈もなく、出せるプリンの数は全6個でした。
ひとまずどういった対応をして良いのかが分からなかったため、素直に『ありません』という事だけを答えると、そのおじさんは言いました。
『そうか、残念だ。…では、今週の水曜日、この時間にまた来ますので、あのプリンを37個用意して頂きませんでしょうか?』
…なんと、まぁ…。
こんな立場のこんな人の願いを断るのはこちらの心臓に悪そうなので断る理由はありませんが、それにしても注文してまで欲しがるとはどういった理由だったのか…そこが最大の疑問になりました(コンビニのオリジナル商品ではないため、スーパー行けば安く売っているのに…)。
あと、その業界の鑑というか、俗に言われるシロウトさんには対応が妙に丁寧で、慣れない気遣いが言葉のどこかに出ている所がなんとも…。
嬉しそうなプリンおじさん
顧客発注の依頼を昼間の従業員に知らせ、『もしも忘れられていたら…』なんてドキドキしながらも当日の勤務。
コンビニの在庫としては莫大なプリンが入荷し、間違っても売ってしまわないよう即座に37個を在庫用冷蔵庫に保管。
本当に来るのかな? とか思う一方で、来ない場合はこのプリンってどうなるんだろう? なんて思う中、店の向こうの通りに覚えのある高級外国車が3台通過…? 暫くしてまた反対車線を3台通過…?
多分、あの車がそうなんだろうと思う中、なんですぐに来ない? という疑問も…。
やがて店内のお客さんが全て会計を済ませ、店内入客ゼロ、駐車場の車両ゼロとなった次の確認時に、3台の高級外国車が相次いで駐車…。
な…なるほど。あちらの世界ではあちらの世界の配慮というものが存在しているらしく、営業の妨害に繋がる事は意識的に避けているようですね…。
そして店内にやはり5人で入店した貫禄おじさんは、真っ先に僕のところに来て尋ねます。
『お疲れ様です。品物は用意できていますか?』
と。
ここで『NO』と答えたらどうなるんだろうという好奇心は確かにありましたが、プリンの為に自我を失うわけにもいきませんので素直に『YES』。
きちんと会計を済ませたおじさんはにこやかに
『ありがとう。…しばらく毎週水曜日にこれと同じものを37個準備願います』
と残し、店を去っていきました。
…てか、来週以降も来るのですか…(汗)。
全7週間、毎週水曜日深夜の固定客
その後も『プリンおじさん』は毎週水曜日の深夜にプリンを買いに来ました。
そのうちの2回は僕が非番でしたので別の深夜アルバイトが対応しましたが、次に僕と顔を合わせれば決まって血相を変えて『プリンの人、全然プリンって感じの人じゃないじゃないか!』と僕に怒ってきましたが、そんな事は知りません。
最後の入店は確か7回目の水曜日だったと記憶します。
その日もいつも通り顧客注文のプリンを会計しましたが、去り際に言ったのです。
『これまでありがとう。訳あってプリンの買い物は今回が最後となるんです。ですので次回以降の注文は無しで…。お仕事頑張ってください』
貫禄満点のおじさんがそう言って店を出ると、残りの4人も深々と僕に頭を下げて出て行き、話通りに次回以降、彼らの姿を見る事はありませんでした。
『訳あって』…。その理由がどいったものかは知る由もありませんが、まあ、少なくとも住む世界の異なる面々ですので深入りは禁物というか…。
僕は僕なりに『きっとスーパーで同じものを見付けたんだな』と、勝手な解釈をして納得しました。…たぶん違うんでしょうけど…。
まあ、学生時代の深夜アルバイトに実際にあった、そんな思い出話でした。
今回のあとがき
人の職業は色々とあるもので、憧れる職業から避けたい職業まで様々です。
ただ、一個人の性格や考え方から同じ職業を指してもその反応は異なるもので、単なる印象1つではどう映るかは分からないものですね。
重要なのは接点があろうがなかろうが無暗に差別できる所など無く、例えば接客業でモノを言えば、節度を守ってきちんとお金を支払って商品を購入してくれるのであれば、それはどんな理由があっても相手は『お客様』という事です。
もちろん、同じ『お客様』にも様々なタイプが存在するもので、たとえ最終的にきちんとお金を払った上で品物を購入されても、それまでにいちゃもんを付けたり、むやみやたらと長居するようでは単なる『迷惑客』となる場合もあるという話ですね。
今回の『プリンのおじさん』は見るからにその手の世界の人でしかないのですが、そういった立場をわきまえてか、
- 客のいない時間を選び(深夜)
- 客が完全にゼロの状態に入店し(外の往復で店内確認)
- 外から新規客が来る前に要件を済ませ(最短時間で商品確認と支払い)
- さっさと立ち去る(撤収?)
…という事を、今考えれば実行していたようにも思えます。
もっとも、僕に言わせりゃ『私服で来てくれれば…』ってな感じでもあるんですけど。
いずれにしてもレアな体験にかわりはなく、なんと言うか、選ぶ商品が商品でしたので、まあ、彼らが手にするには確かにイメージにそぐわないと言うか…。
それでも美味しいものは美味しいですからね。味の好みに関しては、たとえ神様でも反論できないという話でもありますね☆
それにしても凄いなぁ、
Bigプッチンプリンっ!!
すえ
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